[映画]

ビクトル・エリセ『マルメロの陽光』(1992)を見る。この物語の主人公であるアントニオ・ロペス=ガルシアはマルメロの木を描くにあたって、非常に厳密に位置を決定する。キャンバスに向かう立ち位置、視線の位置、地平線の位置、また木の実や葉につけられた「しるし」・・・そうすることで彼は厳密に空間を捉えていこうとする。その空間の位置を決定することで、彼は時間が明確にその空間のなかに流れているのを感じる。彼はその運動的変化を「しるし」をつけることで空間的に捉えていこうとする。それによって絶対的位置を取り戻そうとする。しかしながら木の実は、時間とともに熟れていき、最終的には腐敗に至る。彼にとって空間的位置の決定が時間の流れを感じる契機となる。
このような空間的位置の決定は、インターネットを持つ時代には非常に重要なものといえる。無時間的なネットの中で過ごすことは、必然的に非空間的な世界をも招いてしまう。そうすると自分がどこに居るのか分からなくなる。それゆえ無時間的な世界で、空間的位置を、つまり「しるし」を決定していくことが大切。

地理学を勉強している院生が哲学科の院生に「君は空間には興味がないの?」と話しているのを聞いたとき、少し焦った・・・

ジェイ『伏目』を読む。

空間に関してカーン『時間と空間の文化史』を読むべし。