■メモ(バタイユアインシュタインの関係)
『ドキュマン』の初期段階には、およそ二つの力を見出すことができる。そのひとつは、バタイユであり、もう一方は、ドイツの出身の作家カール・アインシュタインである。彼らは、互いに対立しあう立場から、同じように観念論に対する批判を展開している。当初、アインシュタインは、ドイツ美術史の影響下のもと、『ドキュマン』の理論的な指導者として活躍していた。彼はリーグルなどの影響を受けながら「構築的tectonique」という言葉を用いて、キュビスムの作品を論じている。彼が主張するには、キュビスムは、諸々の混成状態にある対象を視覚的に、絵画的に翻訳し、「構築的形態」によって構成した。この「構築性」こそが、アインシュタインにとって中心的な概念となった。
バタイユはこうしたアインシュタインのドイツ美術理論に影響を受けながら、それに対抗するように自らの理論を確立していった。バタイユの批判とは、概して一貫したものだった。それは、人間の理想的・建築的な思考への反論であり、それを形態や人間の身体など様々な領域に見出している。それに対して彼は、「動物性」や「アンフォルム」、「低級な唯物論」を突きつける。バタイユのこうした理論は、アインシュタインの「構築性」と共鳴し合いながら常に展開されたのである。彼ら二人のテクストの対立は、フランス/ドイツという文化的差異によって生み出されたといわれている。