おろち 1 (ビッグコミックススペシャル 楳図パーフェクション! 4)

おろち 1 (ビッグコミックススペシャル 楳図パーフェクション! 4)

1969〜1970年度作品/「少年サンデー」誌に連載。主人公のおろちの一人称の視点によってこの物語は進められる。『わたしは慎吾』など楳図の作品のほとんどは、主人公の一人称的な視点によって物語が展開していく。しかし、この作品で主人公のおろちは、物語の展開にはいなくてもよい存在である。物語の中で彼女は、時間・空間を越えて常に物語にかかわり、時に物語の傍観者として、また時には物語中の登場人物として描かれる。その境界線は非常に曖昧。(彼女のキャラ設定がよくわからないが、それを議論しても意味がない。)ではなぜ彼女が存在するのか。恐らくそれは彼女の設定を曖昧にすることで、〈読者と寄り添う視点〉という第三の視点を設けることにあるのではないかと思う(その意味で、おろちのキャラ設定ははっきりしている。)つまりこの物語は、彼女という存在によって読者をより物語の内部に引き込むことができるようになっているのではないだろうか。
第一話『姉妹』は、18歳になったら醜くなってしまうという、美の退廃、醜悪さに対する恐怖の物語。美の退廃に対する恐怖は楳図のよく描かれるモチーフ。…ちょっと怖い。