一足先に『ラスト・コーション』を見に行ってきた。
アン・リーのこの映画は、常にリアルとフィクションというの二つの境界が交差して物語が展開している。舞台となっている上海は日本の占領下におかれ、虚像の権力に反旗を翻す演劇を行う学生が物語の中心となってる。この虚像を暴くためにその内部に侵入したにもかかわらず、その中に生身の生[性]を見出してしまう。この映画で話題になっている性描写が妙に生々しく描くということによってそれを表しているように思う。しかしその一方で、この映画の中で何度か出てくる映画鑑賞[フィルムノワール]での自己投影的なシーンは、その禁断の恋自体が、決して現実の世界では成立せず、別の世界であることを表している。最後のウインドウショッピングごしにマネキンを見るシーンは印象的だった。つまりこの映画は、戦争という激闘の時代のなかで現実でありながらもフィクションであり、フィクションでありながらも現実である世界を生きる不安定な若き女性の一生がうまく描かれている。、
久しぶりにこんなシリアスな映画を見たが、たまにはよい。…にしてもトニー・レオンの演技は生々しかった。