蝿男の恐怖 [DVD]

蝿男の恐怖 [DVD]

蝿男の逆襲 [DVD]

蝿男の逆襲 [DVD]

それぞれ1958年59年に上映される。
『ハエ男の恐怖』では、リメイク版の『ザフライ』とは異なり、ハエ男の姿もその変化の過程もほとんど重要ではない。この映画ではハエ男の姿はほとんど隠されたままで、最後に少し登場するのみ。問題なのは、ペットの猫が転送された際に、姿が現れることのないまま、声だけが聞こえるシーン。どこかで論じられているらしいが、ここで主人公は、姿が消えたがゆえに不可視の存在となった「他者」の声に恐怖を感じることになる。このシークエンスは、ハエの恐怖とは、この不可視の他者存在による恐怖と同じものだということを示唆している。普段ハエの存在は、単に排除されるもの(追い払われるものor叩き潰されるもの)に過ぎない。だがたとえ押しつぶしたところで次々と発生するハエは、常にブンブンと羽音を鳴らしながら人間の周りにまとわりつく。人間がそのハエ=他者を克服し、内部に取り込もうとしたとたん、自らの姿までも変化させられてしまう。それは結果としては自らの死を招くことになるのである(プレスによってつぶされる)。
『ハエ男の逆襲』は先の映画の続編ということで、博士の息子が主人公なっている。小説にもない物語なので、完全に映画ない物語で、ホラーサスペンスを強調しすぎているようにも思った。ハエ男は人間とハエが融合され、頭がハエで体が人間、それに対して人間バエは頭が人間で体がハエ。どっちが人間の意志(脳)をもっているのかという問題がどうもあやふやになっている。