残存するイメージ

残存するイメージ―アビ・ヴァールブルクによる美術史と幽霊たちの時間

残存するイメージ―アビ・ヴァールブルクによる美術史と幽霊たちの時間

本書は、「イメージの前で」で明らかにされた、非知の眼差し、そして「時間の前で」における無意識の中で表出する多層的な時間的様態としてのアナクロニスムの延長線上で書かれたもの。
以下疑問点。ヴァールブルクによる美術史を当時の様々な思想(タイラー、ニーチェ、ブルクハルト、フロイト、ビンスワンガーなど)と対比参照させることで明らかにしようとする彼の方法論は、非常に明確なものということができるが、それが全て最終的には、時間のモデルとして参照されるフロイトの無意識の理論に収斂していくことは少し問題があるように思う。また同様に美術史を問題にしているためか、これまでの美術の歴史がすべてヴァールブルク記憶をめぐる「症状」として読みかえることにも疑問が残る。そのためイメージにおける時間性を強調しすぎたため、本書では、イメージそれぞれの強度というものを均質化してしまっているように思えてしまう。同様に写真自体のヴァナキュラー性や匿名性などはまったく問題にはされていない。解説でタナカ氏も述べているように、ヴァールブルクの理論を症状としてイメージを読むユベルマン自身がイメージに取り付かれてしまっている。