ゴシックの視覚理論

ゴシック建築とスコラ学 (ちくま学芸文庫)

ゴシック建築とスコラ学 (ちくま学芸文庫)

タイトルからも明らかなように、この本でパノフスキーは、スコラ学の思想とゴシック建築の理念の類似性を見て取り、そこにある種の<精神習慣>のようなものがあることを指摘する。パノフスキーによって引き出されたスコラ学の原理は、1隆盛期ゴシックがどのように見えるかを示す「マニフェスタティオmanifestatio」、2それがどのようにして生起してきたかを分析する「コンコルダンティアconcordantia」の二つ。そして1によって、ゴシック建築の全体性、相同性、明確性などが明らかにされる。
この二つの類似性(ゴシック/スコラ学)の賛否はどうあれ、問題なのは、パノフスキーがスコラ学からゴシック建築のなかに一定の「視覚論理」を読み取ったということ。、これまでの伝統様式(ロマネスクなど)を引き継ぎながらもゴシック建築はその壁面や装飾を明瞭に顕現するというこれまでにない様式を生み出している。
ゴシックとは何か―大聖堂の精神史 (ちくま学芸文庫)

ゴシックとは何か―大聖堂の精神史 (ちくま学芸文庫)

酒井さんは明瞭性とは程遠いゴシックの分析を行っている。