恐怖マンガ・ホラー映画とカノウ姉妹

映画の恐怖 (ナイトメア叢書)

映画の恐怖 (ナイトメア叢書)

「人間ならざる人間」を読んでみた。
本論文はマンガ・映画に現れる「人間ならざる人間」を、それぞれのメディアの特徴を示しながらも、ある種の共通のモチーフによって捉えていこうとする。問題はなぜ人間として表象しているものが「人間ならざるもの」に見えてしまうのか?ここで映画/マンガにおける「人間ならざる人間」というのは、そのメディアにおいて如何にして人間らしさを捨て、別の次元の存在=「人間ならざるもの」へと変貌させるかことである。そこで本論が指摘するのは、それぞれのメディアに備わっている物質性である。例えば映画(高橋)の場合は、対象を現実から切り離すカメラのフレームであり、マンガ(楳図)の場合は、手塚的キャラにもキャラクター的な心理描写にも還元されることのない描線そのものである。
僕の最近の研究を総まとめしてくれるようなよい論文。でも、それぞれのメディア特有の性質(それを物質性とよんでもいい)によって生み出される非人間的、非心理的なものから「人間ならざる人間」を捉えていくというのは良く分かるが、この方法自体は古典的なものへと立ち返っているような気がする。そこまでメディアの特性にこだわるのであれば、逆にそれが如何に物語のなかで表象されていくのかということを詳細に論じる必要があるように思う。物語を塞き止め、そしてつなぐその可逆的な関係性の中で始めてその物質性というのが立ち上がってくるはずである。

■カノウ姉妹
叶姉妹考--カルチュラル・スタディーズの視点から見るボディメイキング」(『年報人間科学 』)
こんな論文があるんか。明日にでも調べてみる。