上を向いて歩こう

◆東京:表象文化学会に行って来ました。おろち 1 (ビッグコミックススペシャル 楳図パーフェクション! 4)猫目小僧 1 (ビッグコミックススペシャル)
ウメズ論は、『イアラ』『おろち』『猫目小僧』を中心に、ウメズマンガの物語における語り手の脱境界的な描き方によって、読者を如何に「心理的」恐怖へと導くのかというもの。主人公(おろち、猫目小僧)は、一方で当然、絶対的な存在であり決して死の危険に遭遇することがありえず、また読者を恐怖の物語へと導く案内役=語り手である。またウメズマンガにおいては、主人公は他の登場人物や怪物などとははっきり区別されて「美しく」描かれている。だが他方で、ウメズマンガにおいは、この不死の存在であるはずの主人公が死の危険に直面する場面が頻繁に登場する。それは、語り手自身も予測していなかった出来事である。しかしそうした物語によって、主人公に感情移入していた読者は、この語り手と共に「恐怖」を体験することになるのである。
ただ後期長編作『漂流教室』や『真悟』では、語り手自身が誰でどこで何時語っているのかということは不明で、物語の外の超越的な視点から語られているので、それについては当然こうした分析は当てはめにくい。
◆伏目論
坂本九の「上を向いて歩こう」という歌は、どうものんきな歌だなーと思っていたのですが、この歌の内容は悲しいことがあってもそれに沈み込むのではなく、上を向いて星でも数えて忘れよーよ、そしたら幸せが見えてくるよ、というものでして、伏し目がちに下を向いて歩いてては駄目だと言いたいんだと思う。つまり涙を堪えて上を向いて歩くという身ぶりは、「まなざす」という視覚でも、伏目の視線でもないもうひとつの視覚ではないか。…もう少し考えてみる。

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