寝ずの番 [DVD]小さいときによく可愛がってもらった祖父が亡くなったと連絡をもらったので葬式に出席してきた。93歳でほとんど老衰で静かに臨終を迎えたそうです。夏も盛りの時期だったので、遺体にはドライアイスが大量に着けられていた。そのためか、水滴のついた祖父の顔は黄色く、人間の顔というよりも蝋人形のそれを想像させるものだった。
そんなわけで、お通夜を終え、線香と蝋燭を絶やさぬよう何人かで「寝ずの番」をすることになった。映画の『寝ずの番』のように、おそそも大宴会も格別面白い話もなかったのですが、ただ死者を前にして記憶を頼りにして生前の思い出を語るという体験はなかなか味わえないものだった。時に遺影写真を見つめ、またあるときには、棺桶に収められた遺体を遠くに見つめ、またある時には、記憶をたどるために空をぼんやりと見つめる。そんなまなざしの交差が夜通し繰り返されていた。
この映画の面白さは、仏壇の前で数々飛び交う卑猥な下ネタにあるのではない。むしろ祭壇の前で語り合い、視線を交わすことによって、ある意味で死者を蘇らせ/眠らせる、そうした奇妙な空間・時間を生み出すことがこの寝ずの番では可能になるということにあるように思う。そう考えると、ほとんど中島らもの脚本勝ちだと思うけど、いくつかの場面で、死者の復活が効果的に描かれていたのと木村佳乃のおそそをみせる恍惚的な演技がすばらしかったので、70点ぐらいあげたいよい映画。
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