三重県は摩訶不思議な場所

 
Laurent Olivier,Le sombre abîme du temps : Mémoire et archéologie 2007
考古学とは常に過去の遺物を物質的対象としている。だがこの対象に根拠を置く限り本来その方法の中に矛盾がある。というのも過去の遺物を過去のものとしてはなく、「現在の」過去の遺物へと再び取り上げることに考古学的ディスクールの本来的意義がある。それゆえ、考古学的時間はそれぞれの時代の中で常に過去を反復的に繰り返しすことになる。こうした問題があるならば、実際我々は過去の遺物を前にしてどうすればよいのか?つまり遺物を遺物のまま放棄すべきなのか、それとも新たな(現在)文脈へと組み込むべきなのか?考古学的ディスクールの問題を指摘すると同時に、そうしたジレンマを如何に解消するのかがこの本の主な内容。
そういえば、先日ちょっとした用事で三重県松坂市の『飯高洞窟美術館』と『虹の泉』を訪問してきました。どちらも個人の収集による私立美術館ですが、そのコレクション力には目を見張るものがある。特に洞窟美術館はまさにアジア地域などの地域に眠っていた仏像なりを考古学的に発掘・収集した遺物を展示している。また神々しいものなら何でもよく、仏教、ヒンズー教など何でもありである。さらにすごいのは、こうして収集した結果、神のご加護を受け「命の水」まで授かったそうな(しかしあまりの数の多さに全く手入れはされておらず、折れた腕が放置されたままの仏像まであった)。この水はかなり効能がいいらしいので、余計なことは考えずに心身ともに疲れているときにはいやされた時にはいいかもと思ってしまった・・・かつて秘宝館もあった三重県とは摩訶不思議な国なり。