『マスメディアとしての近代建築』

■『マスメディアとしての近代建築』
ロースとコルビュジエの建築をメディアとして捉えるという彼女の出発点となるのが、建築写真、あるいは建築雑誌に対するそれぞれの態度。ロースが建築写真を本来の建築を再現するものではないと否定したのに対して、コルビュジエの場合は、建築を「よく見る」ために、加筆修正を行いながら、建築写真が大いに利用される。こうした二人の対極的な態度は、それぞれの建築のあり方にも反映されている。そこで問題となるのが、両者の「窓」の用い方。写真によって建築をよく見ようとしたコルビュジエが製作した水平窓は、あたかもスクリーンとして、あるいはカメラのレンズとして外部へと我々の視覚(また身体)導く。対してロースの場合、窓は「光を取り込むため」のものであり、その建築は家庭的な建築となるように内部に中心が向けられている。