写真の痕跡の痕跡化

■中ハシ克シゲ展 ZEROs−連鎖する記憶−

滋賀県美から参加者全員で写真でできたゼロ戦を運び、比叡山高校の近くで燃やすというプロジェクトに参加。

中ハシは、写真によって一ミリ単位で空間・時間を層状に重ね合わせ、それを組み合わせながら、彼の中心的な主題である「日本・戦争」という記憶を再現する。さらに彼は、断片的に切り取られた二次元的な写真を連続的に張り合わせることによって三次元的に再現する。それは、様々な時間や記憶が織り込まれ、現実のモノとして観者の前に現前する。しかしその再現された現実の記憶(ゼロ戦)は、決して過去の記憶と一致しているわけではない。それは写真が張り合わされた(セロテープで)ものであるがゆえに、中身のないふにゃふにゃしたゼロ戦であった。
その中身のないゼロ戦を焼却することによって、もう一度記憶に痕跡化すること。そこに残された写真の消失した灰の痕跡は、戦争という過去記憶と現在の記憶という時間的連続性を断ち切るものであると同時にそれを別の形で結びつけるものであるのではないでしょうか。
それにしても、焼却時間の2時間はとても寒かったし辛かった。寒すぎるし、中ハシ自身も何も語らず、火が消えるのをじっと待っていた。で終わったら、さぁ帰りましょう…って、それはないよという感じであった。