パルス

視覚論 (平凡社ライブラリー)

視覚論 (平凡社ライブラリー)

原稿が止まってしまったので、必死で三宮に買いに行った。表紙は前のピカソの方がいいな。
クラウス「見るインパルス/見させるパルス」を読み返してみた。この論文で彼女は、視覚の抽象化と形態(形式)の合理化というモダニズム的な視覚性に抵抗すべく、主体と対象の間で生じるリズム・パルスを問題にしている。彼女の視覚論は、いくつかの美術作品によって行われているが(エルンスト・デュシャンジャコメッティピカソ)、その視覚性というのは、ある程度その作品の特性に依拠しているように思う。ハイカルチャーに抵抗すると言いつつも、作品それ自体がリズムやパルスを喚起しやすいような「美術作品」を限定して選んできている。だから、もっと(サブ)カルチャー的なもの、例えば一般的な写真とかについては全く触れられていない。ある意味、パルスとは対象によって喚起されるのかとも考えられる。動かない対象もいくらでもある。リオタールの議論と作品分析がかみ合わないのも恐らくそこにあるんだと思う。